たぶん、若いモデラーには単純に、「塗装をする前にはサーフィエサーを吹くものだ。」と、機械的に作業している人も多いのではないだろうか?
そういう人にとって興味深いコラムになってもらえると嬉しい。
実は、私が10代の頃(およそ30年前)には、「サーフェイサーで下地を作る」という概念は無かったように思う。いつも言うとおり、田舎者で知らないだけかも知れないが、当時のタミヤニュースや店頭でのお話しの中でも、「サフ吹いて、、、」みたいな話は、ついぞ聞いたことがない。
今回私が出戻って、いろんな調査上、「ふーん、今はサーフェイサーというものを吹くらしいな」という事を知ったが、今ひとつ「サーフェイサー」というものの概念が理解できず、正直、「なんで、そんなもん吹かなきゃいけないんだ!」というのが正直な気持ちだった。
うん、答えは簡単。「やってみりゃわかる!」というわけでいくつかサフェーサーを購入して、使ってみた。今回の対象となるのはこちらの品。
サフェーサーの基本概念を理解するためのものなので、比較的スタンダードなものを選んだつもりだが、私の記事を読んで、「いや、サフェーサーってそんなモンじゃない!」っていう意見もあるかも知れないが、感想も意見も、いつも通り私の主観であることを理解して欲しい。
さて、この4品の違いについて、書いても良いのだが、はっきり言って、「すごい違い!」を感じることが出来なかったので、もっと根本的な、一般に言われている、「サフェーサーを吹く理由」を今回の主題にしたいと思う。
一般な「サフェーサーを吹く理由」は、以下の三つである。
- 塗料の定着を助ける。
- 下地の傷、荒れを隠す。
- 造形の確認。
まず、「塗料の定着を助ける。」ということだが、個人的には疑問?。そもそも、模型用塗料はプラスティックへの定着を前提に作られているものだろうし、アクリルガッシュなどの絵の具がプラモデル業界に浸透した理由は、ストリートアーティストたちが、「風雨にさらされても強い絵の具」として活用したのが始まりだろう。これらの塗料はもともとプラスティックへの食いつきが良いのだ。
まあ、「塗料の固着力を強化する能力」というのがあっても良いかと思おうが、「じゃあ、どの程度?1工程増やしてまで処理する必要があるのか?」という気もしないでもない。
使用した感覚としては、「サーフェイサー自体のプラへの食いつきはとても良い。」と感じるが、サーフェイサーを吹くことによって「「ラッカー」、「アクリル」、「エナメル」の各塗料の食いつきがすごく良くなった。」と感じることは出来なかった。
また、この点においてサーフェイサー個々の特徴は出やすい。
具体的には、表面が比較的綺麗に仕上がる「モデルカステン 丸サフ」は塗料の食いつきが今ひとつだったが、同時に(サフ自体の)塗膜が薄く仕上がる傾向にあり、自体の金属などへの食いつきは良い。といった感じ。
個人的には、塗料の定着力UP、言い換えれば、「塗装後に頻繁に触りながら作業する場所には、必ずサフ処理。」というイメージなのかも知れないが、はっきり言ってその能力には、やや、疑問を感じる。上記の感覚で作業しているつもりだが、やや疑心暗鬼。正直、「塗装の下地」がメインの目的であるなら、必ずしもサーフェイサーを吹く必要はないのではないか?と思う。
次は、「下地の傷、荒れを隠す。」という能力。
この能力は、GSIクレオスの商品において、(あるいは筆塗りにおいて)強く感じた。
クレオス商品においては、(上記写真左下)1200番、(上記写真右下)500番といった感じにサンドペーパー同様の番号表記があり、それに準じた能力を持っている。
特に500番のボトルには「溶きパテ」という記述も見られ、私も実際、ラッカーパテを溶いて、溶きパテを作るのは面倒なので、この500番サフのお世話になっている。
この商品のおかげで「サフェーサーのなんたるか?」が見えてきた。
サーフェイサーとは、そもそも、薄い「溶きパテ」を塗って下地を作る事なのでは無いだろうか?
パテなら薄められているとは言え、プラスチックを溶かすほどの能力があるので、プラへの食いつきは最高だろう。同時に比較的フラットなプラスティックの表面をパテ粒子の力で若干荒らして、「ザラザラ」を作り出すことが出来れば、結果的に「塗料」の食いつきは上昇する。「溶きパテ」=「サーフェイサー」という図式はあながち間違いではない気がする。
あとは、各社がサーフェイサーの機能に合わせた追加効果を添加しているのではあるまいか?
ともかく、クレオスのビン入りサーフェイサーシリーズは良い出来で、私も愛用している。
1200番はエアブラシで吹いて良し、「ヤスリの跡が消えていないなー」って言うときに、筆で(塗装の上からでもかまわないので、)ちょっと塗ってやると、小さい傷なら隠すことが出来る。
500番はエアブラシで使ったことはないが、形成の境目を修正したり、細かな造形を爪楊枝で書いたりする用途でも利用可能な優れものである。
しかし、この能力、問題も含んでいる。「番数がある以上それに準じた分だけ、模型の造形を丸めてしまう可能性がある。」ということだ。
これは、塗料も同じ事だが、塗膜が厚すぎるとモールドがどんどん丸められ、リアルさが失われていく(場合にもよるが)。サーフィエサー/塗料が厚くなればなるほど、モデルの持っているシャープさが失われていくことは、間違いない。そのため、多くのエキスパートモデラーは「薄く、かつ、効果的な」塗装法を目指しているはずだ。
実際、タミヤのスプレー式サーフェイサーを使用してみると解るのだが、表面張力により、「溝/へこみ」に当たる部分の色が強くなりやすい。
サーフェイサーによる傷隠しが目的の場合、事前にしっかりと、傷を隠してしまえば別にサーフェイサーのお世話になる必要性はないので、ここでもやはりサーフェイサーの絶対的な必要性は感じない。
バイクや車のボディーなど、「ツルツル/ピカピカ」に仕上げたい場合はサーフェイサーの表面張力が魅力になる場合はあると思われるが、最近のAFVモデルなどの緻密な表面処理などのモールドを曖昧にしてしまう可能性もあるということを理解して使用すべきだ。
いずれにしても、程度問題で、「適切な番数のサーフェイサーを適当な量使う。」のにつとめるのが良いと思う。
最後に、「造形の確認。」目的でのサーフェイサーである。
個人的には、「かなり効果的な手法である。」と感じている。プラモデルのランナーセットは、メーカーにもよるがオリジナルカラーに近い色で構成される場合が多い。
今回RGBも「フレーム」、「エンジン」周りが「ブラック」。「タンク」「カウル」「シートカウル」が「ホワイト」のプラスチックで構成されていた。
ちなみに、「ブラック」「ホワイト」共に、非常にモールドの詳細を確認しずらい色である。「モールドの確認」というと「なにそれ?」と思うかも知れないが、組立の際に説明した、「パーティングライン」や、「ピン痕」、「接着痕」など、本来消してしまいたい乱れが、目立ちにくいと言うこと。
実際、塗装を開始した段階で、これらを発見してしまい。「どうしよう?直すか?このまま見なかったことにするか?」と私自身悩むことが多い。
こういう問題を解決するために、(グレーの)サーフェイサーを吹いてコントラストを明確にしておくことで、塗装時のトラブルを未然に解決しておく。という使用目的である。
個人的には、非常に良い考え方で、私がサーフェイサーを使用する目的のほとんどはこれである。
当然のことだが、サーフェイサーで確認しただけで終わってしまっては意味がない。
確認後にしっかり手を入れるのが目的なので、サーフェイサー後にナイフやヤスリ、場合によってはパテを使って造形を修正する。
事前にある程度やっているつもりでも、サーフェイサーのグレーのおかげで際立ってくるケースは結構あり、私はここでかなりの手を入れるようにしている。
前にも書いたが、私は塗装好きなので、どうしても塗装に突入したくなってしまうが、サーフェイサーの段階で、しっかり確認し、「塗装にはいって良いのか?」と自分にブレーキをかける役目を果たしてくれるので大変役に立ってくれる。
極端なことを言うと、サーフェイサーでなく、グレーのラッカー塗料で、下地を作るのもアリかも知れない。私がサーフェイサーを使う理由は、そんなに「こうじゃなきゃいかん」というこだわりによるものではない。
結論としては、
「自分の目的をはっきりとセットして、目的に見合った使い方をするなら、サーフェイサーも役立つ。」といったところ。
以前ネット上で、「塗料がはげやすいのはサーフェイサー処理をしないから。」とか、「サーフェイサーで必ず下地処理をしよう。」
みたいな、記述を見かけたことがあるけれど、「それほどのモンじゃない。」というのが正直な意見。
サーフェイサーは必ず吹かなければならないものでもなく、面倒くさければ吹かなくてもそんなに変わらないと思うし、やり過ぎはかえって害になる場合もあると、認識しておこう。
最後に、トップで紹介した各種サーフェイサーの特徴を紹介したい。
モデルカステン 丸サフ
- プライマー成分含有で、金属への食いつき良し。
- 軍用車両の下地色に合わせた色により、塗装剥がれ時の表現にも使える。
- 「パテ」感低く、傷埋め効果も低い。
- ラッカー塗料感強く、プラへの食いつきは良し。
- 塗料の食いつきはイマイチ。上に塗られる塗料のタイプを選ぶ必要有り。
タミヤ サーフェイサー ライトグレイ Lサイズ
- 好みにより、グレー、白のカラーが選択できる。私のお薦めはグレー
- パテ粒子は標準的。
- ラッカー濃度の関係か、表面張力の影響受けやすい。
- 下地カラーの隠蔽力低い。
- プラへの食いつき、標準的。
- 塗料の食いつき、標準的
GISクレオス Mrサーフェイサー 1200
- 番数を選択できるのは、大変魅力的。
- ビン入りは利用者の目的によるが、ラッカー濃度による番数調整も可能なので良し。
- ビン入りのおかげで、筆塗りもかなり有効
- 筆塗り/薄め無しの場合、下地カラーの隠蔽力高し。
- プラへの食いつき良い。
- 塗料の食いつき標準的。
オマケに、現在の作業紹介。
仕方なく、組立前に塗ったスズキRGB500のリアサスペンション部。
古いモデルのため、パーツ同士の合わせは、案の定、良くない。そのままにしておきたくなかったので、他作業で使ったエポキシパテの余りを詰め込んで修正。
カッターで削って修正後、微傷隠しのため、サーフェイサー1200番を筆塗りして、再塗装。
自分的には丁寧にやったつもりだったけど、仕上がりはやや荒いなー。
とまあ、ちまちまと、作業をしています。
次回、ついに塗装の話をして、ひとまず初心者向け集中連載を終了したいと思います。
でも、次回で終われるかなー。ちと不安。
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