今日は前に紹介したCALVIN TAN(カルビン・タン)氏の話をしようと思う。
私が10代の頃から世界中に素晴らしい、モデラー、ジオラマビルダー達がいた。
タミヤニュースなどで、彼らの作品を良く目にしたが、日本のジオラマ、フィギュア作成者達とは違う独特の、コントラスト、技法を用いた作品が多かった。
私の周りには「くどい」、「やりすぎ」といった否定的な意見が多かったが、私個人としては、ヨーロッパのフィギュア作成文化、技術は独自の歴史を持つ素晴らしいものだと、と思っていた。
「くどい」という意見はある意味間違いではないのかも知れない、しかし、多くの人が「くどい」と感じるのはズームアップされた写真を見た際の話であり、ほとんどの人は、これらのフィギュアを実スケール、直に見る機会は少ない。
1/35のフィギュアは非常に小さいため、肉眼で見た場合、やや「くどい」くらいでないと、表情が伝わってこないのが事実だと思う。
さて、初っ端から大きく脱線したが、現在海外で活躍する、ジオラマ、ビネット、AFV、ミリタリー・フィギュアのビルダーの中で、最も著名な人物と目されるのが「Calvin Tan」氏である(これはあくまでも、個人的見解である。)。
私が彼の作品を初めて見たのは、「Alpine Miniatures」のレジンフィギュアに付属したリーフレットである。
アルパインのレジンフィギュアは、作成そのものは単純なので、「作成説明書」は付属しないが、「塗装例見本」としてカラーの小さなリーフレットが付属する。
カルビン・タン氏は、アルパインの塗装見本を多く手がけており、リーフレット側にも彼の名前が明記されている。
あまりにも素晴らしい塗装だったので、彼の名前をインターネットで検索した結果たどり着いたのが、彼のブログであり、著書であった。
カルビン・タン氏のブログはこちら。
彼が最も得意とするのはミリタリーフィギュアではあるが、1/16か?あるいはそれ以上大きいと思われる「バストモデル」。1/35のビネットを多数作成している。
ブログでは彼の新作が次々と紹介されており、中にはちょっとした技術解説までしてくれているページもある。
私のACU迷彩塗装も彼の技術を参考にさせて頂いている。
彼は「フィギュア・ビルダー」ということで、塗装技術はもちろんだが、フィギュアのディテール作成のtipなども多数見ることが出来るので、興味のある人は隅から隅までクリックして確認しても飽きない、素晴らしいブログである。
なお、今回この記事を書くに当たり、「大胆だが、リンクするにはマナー」と思い、Calvin Tan氏に直接メールを送り、リンクの許可を問い合わせたところ、快く引き受けて頂いた。いい人である。
こちらは、彼の唯一と思われる著書。ミリタリーモデラーにはお馴染み「Osprey Modelling」の「Modelling Waffen-SS Figures」
アマゾンと楽天ブックスを並べてみた。楽天ブックスはやや高め。
私の持っている本の写真もいくつか並べて解説してみたいが、やり過ぎると、著作権にひっかかりそうなんで残念だけどさわりだけ。
本の中では、上記の写真のビネット、4作品の作成過程が詳細に解説されている。
いずれの4作品も旧ドイツ軍のSSを扱っており、彼らの迷彩服が緻密に塗られている。
どれも、緻密、リアルであるだけでなく、コントラスト、バランスが計算されて芸術的だ。
こちらは、顔塗りを紹介している。彼は、フィギュアだけでなく、基本的に全ての物体を「ブラック」で塗りつぶし、その上に「ホワイト」をドライブラシすることにより、最初に「最も深いシャドー」、「ハイライト」の基礎を作る。
その後に、「ダークなベースカラー」、「ベースカラー」を薄く、時にはドライブラシを使いながら着色していく。詳細を塗っていった最後に、再びハイライト、シャドーに彩色する。というのが基本的な技術になる。
詳細は是非本を読んで欲しい。
(ちなみに、本書登場ビネットの一つに、車両の一部が登場するが、こちらも全面フラットブラックからスタートしていた。)
一番暗い部分は、当然一番へこんだ部分にあるわけなので、一番へこんだ(塗りにくい)、最も暗い部分の色から着色していくと言う方法は、理にかなっている。
彼がこの技法を用いる理由としては、「下地色の違いにより上に塗った色の発色は違ってくる。」ということらしいが、私が試した感じとしては、黒に白のドライブラシを掛けることによって初期段階でモールドの詳細を確認する意味合いもあるのではないか?と考えている。ハイコントラストの下地を作ることで、その後、モールドに合わせて、着色に変化を加えることが非常に容易になる。
一般的フィギュアを作る人の多くは「黒」の上に他の色を乗せたら「発色が悪くなる」と思う人も多いかも知れないが、その辺は「業界違い」の部分もある。また、ミリタリフィギュアを塗装する場合よく使われる「エナメル系塗料」は下地の隠蔽力が強いので、その辺は彼の著書でもわかるが、上塗り塗料の濃度の調整が非常に重要なポイントになる。
私はタミヤのエナメルカラーで、彼の手法を真似ているが、隠蔽力があまりにも強いので、「下地処理に意味があるのか?」と疑問に感じる部分もある。
ただこれも、何体か塗ってきた経験で、「上塗り塗料の濃度」「筆に付ける量」などで、かなり効果に違いが出る事が分かった。
顔の詳細塗りにおいては、上に行くに従って、薄く、筆に付ける量を少なくして、更にそれを数回に分けて塗り重ねることで、同じ色を塗った場合でもかなり印象が変わる。
彼の利用するのはクレオスのエナメル(本書では「GUNZE SANYO(gunze sangyoの誤り?)」となっている)のベース塗料に、ハンブロールで細部を塗るのがスタイル。ハンブロールは、いったん乾燥してしまうと、「上から溶剤を塗っても剥がれてこない。」という特性がある。溶剤揮発ではなく、酸素による反応というハンブロールの特徴が、彼の塗装法のベースになっているのかも知れない。
単純に、彼のこの手法を真似ると、ドライブラシ時の塗料ムラがガビガビになり、完成時まで後を引くはめになる。真似る場合、ドライブラシ時の、塗料濃度や後の塗装時の工夫が必要になるだろう。
ちなみに、本書内でも、確信と言える「目の塗り方」については、「目を塗る」程度にさらりと流されてしまっている。ま、その辺はしょうがないか!
上記写真は同書で紹介されている加工技術の一つ。
彼はタミヤのアクセサリーをよく利用しているようだが、上記写真では、「ドイツ軍マップケース」のサイドのモールドにご不満のようで、サイドにヤスリでへこみを入れ、その上にパテとシンナーでシャーリングを造形する様子が解説されている。
本書では、塗装の解説、フィギュアの作成、修正の記事がおおよそ半分半分の構成となっていて、「塗装よりも、モールド修正の技術がほしい」という人の欲求にも大いに応えてくれる。
日本でもよく知られているフィギュアビルダーだが、彼の詳細なテクニックを、彼のホームページや、紹介の本の中で、ぜひ学習研究して欲しい。
こういう、細かい作業、細かい技術により、世界的なモデラーになるのだなー。などと思いを巡らせると、制作意欲が湧いてくること、間違いなし。
ミリタリー・フィギュアを塗装をする人、これから塗装を目指す人、今よりランクアップしたいと思っている、全てのモデラーにお薦めしたい本である。
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なるほど、これがfpsopさんのフィギュア塗装のルーツだったわけですね(^O^)/
返信削除ところでこの記事のfpsopさんの書き方が上手くて何かの雑誌のひとつのコラムを読んでいるように錯覚しました!(・・;)
この方法はエナメル塗料ほどの隠ぺい力がある塗料ならではのやり方ですね。エナメル塗料は使ったことが無いので一度やってみたいです(゜-゜)
なんか凄い褒めてくれて、嬉しいような、照れくさいような・・・。
返信削除笑われるかもしれませんが、私のフィギュア塗装のルーツというより、一つの目標です。
今回はじめて、Calvin Tan氏にメールを出しましたが、「相互リンクさせて下さい。」って言える位の腕になってみたいものです。